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中和滴定 と可視吸収スペクトル(a)

中和反応の量的関係を学ぶ。また、中和滴定における酸塩基指示薬の使い方について考える

実験風景

実験の紹介

実験の目的とねらい

何の物質であるかはわかっているがその溶液の濃度がわからないという場合、それと反応する物質の溶液を用いることにより、濃度を測定することができる。酸と塩基との中和反応を例にとり、物質量とモル濃度および液量との関係を理解する。なお、この滴定の実験において、中和点の見極めが重要である。これは酸塩基指示薬の色の変化にもとづくが、その判断をどのようにして行うのかも、実験者に課せられている。机上試薬の3M NaOHの実際の濃度は、実験台(滴びん)毎にかなり違うと推定される。それがどの程度の幅をもっているのか、検証することもこの実験のねらいの1つである。

実験内容

酸塩基指示薬を1つ選び、変色域のデータをもとに塩酸を1~数滴加えて(試験管に)色見本を作成し、写真をとる。水酸化ナトリウム水溶液(共通試薬)の一定量を三角フラスコにとり、ビュレットに入れた標準シュウ酸水溶液を滴下して中和させる。この操作を3回行って水酸化ナトリウム溶液の濃度を求める。次に水酸化ナトリウムの机上試薬を50倍に希釈し、その一定量を先と同様に標準シュウ酸水溶液をもちいて滴定し、机上試薬の濃度を求める。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]

・ 0.0500 Mシュウ酸標準溶液
・ 指示薬溶液(滴定用およびスペクトル測定用)
   メチルレッド(MR)、ブロモクレゾールパープル(BCP)、ブロモチモールブルー(BTB)、
   ニュートラルレッド(NR)、フェノールレッド(PR)
・ pH調整用酸および塩基(0.001 M HCl, 0.01 M NaOH, 0.001 M NaOH)
・ 25 mlビュレット(2人で1本)
・ 1 ml ホールピペット(2人で1本)
・ 5 ml ホールピペット(1人1本)
・ 50 ml 三角フラスコ(1人3個)
・ NaOH共通溶液(約0.06 M)用タンクおよびビーカー
・ 50 mlメスフラスコ(2人で1本)
・ ミニ分光器SEC2000 UV/VIS
・ デジタルカメラ
・ フォトプリンター
・ 個人器具および机上試薬

[試薬の調製]
・滴定用指示薬溶液
濃度は0.01 Mとする。ただし、NRについては色が薄いので、市販の1% (65%EtOH)溶液をそのまま用いる(これは0.04 Mに相当する)。MRとBTBは水への溶解度が低いため、50%EtOH溶液とし、BCPとPRはEtOH溶液とする。

・スペクトル測定用指示薬溶液
濃度は0.00001 Mとする。ただし、NRは色が薄いため0.0004 Mとする。
 

<実験開始時の注意>
・ ビュレットに溶液を入れるときは目の高さより下で作業し、また必ず保護メガネをかける。
・ ビュレットは溶液を入れてからコックを全開にして、空気を抜く。
・ ピペッターにピペットを差し込むときに、無理な力をかけない。(けがの防止)。
・ ピペットを直接びんに突っ込んではだめ。
・ ピペッターが吸い上げ不良の場合は交換する。

<失敗例>
(原稿準備中)

 

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学日吉キャンパスの文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマが開始されたのは1949年の新制大学発足の翌年以降と推定されます。実験操作の内容は参考文献(1)に記載されています。その実験内容は、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を滴定により決めた後、与えられた塩酸溶液の濃度を測定するという内容でした。しかし、身近なものに関連させるために2004年に内容を変更し、塩酸溶液のかわりに食酢を10倍に希釈して滴定することにしました(2)。さらに、2011年には内容を大幅に変更して、机上試薬の3M NaOHの濃度を滴定によって検査すること、ならびに酸塩基指示薬のpHによる色の変化を、可視吸収スペクトルで測定することにしました(3)。

参考文献
(1)「大学課程 一般化学」佐々木洋興、辻岡昭、膳昭之助、大矢徹 共著(オーム社、 1968年).定量分析法について[実験7]、pp.267-269.
(2)「教養の化学実験」群馬大学、教養の化学実験研究会編(学術図書出版社、1999年).中和滴定、pp.47-49.
(3) 小畠りか、向井知大、大場茂 「中和滴定と酸塩基指示薬の可視吸収スペクトル」、慶應義塾大学日吉紀要、自然科学No.50, 77–102 (2011年)。