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原子スペクトルと光の作用 (b)

原子から発せられる光と、原子中の電子エネルギーとの関係を学ぶ。

実験風景

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実験の紹介

実験の目的とねらい

量子論は20世紀初頭にわき起こり急速に発展したが、そのきっかけを作ったのは種々の実験事実であった。水素原子が発する光の波長は不連続で、しかもその 波長の数値は簡単な1つの式で表わすことができる。1885年に数学者のバルマーがこの数式に気付いた。なぜそのような式になるのかを電磁気学などの原理 を使って理論的に導出したのがボーアであり、これがもとで原子構造が解明されていった。これに関連して本実験では、水素原子から発せられる可視光を分光器 で測定し、原子中の電子のエネルギーと光の波長との関係を確認する。また蛍光灯と白熱灯の光の発生機構とスペクトルの違いについても学ぶ。

実験内容

直視分光器を用いてバルマーランプ(水を解離させて水素原子の励起状態をつくる)からの光のスペクトルを観察し、輝線の本数とそれらの色を記録する。また ファイバーを使って光を取り込み、ミニ分光器(手のひらサイズ)を用いて、パソコン上でスペクトルを解析し、輝線の波長を求める。そして、バルマー系列の 波長の理論式に量子数m=2, n = 3,4,5をあてはめて、リュードベリ定数Rを求める。 白熱灯と蛍光灯のスペクトルの違いも観察する。また紫外線の作用を調べるために、ブラックライトを蛍光鉱物や使用済みハガキ、UVチェックビーズなどに照射する。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]
・バルマーランプ
・蛍光スタンド
・白熱灯
・ミニ分光器(浜松ホトニクス(株)製、C10082MD型)
・光ファイバー
・パソコン
・直視分光器
・蛍光灯形ブラックライト(および乾電池)
・蛍光鉱物標本(蛍石、Mn方解石、ルビー人工結晶、ウェルネル石、ハックマン石)
・電卓
・UVチェックビーズ
・使用済はがき
・ホトクロミック化合物

[試薬の調製]
ホトクロミック化合物(1,3,3-トリメチルインドリノ- 6’-ニトロベンゾピリロスピラン)0.01 g をトルエン100 mlに溶し、サンプルびんに小分けして入れる。

<実験開始時の注意>
・バルマーランプは高電圧(1500 V)がかかっているので、端子に触らないこと。また、ランプも高温になるので、触らないこと。
・光ファイバーは石英でできているので、無理にまげないこと。
・ブラックライトを鉱物標本や使用済はがきなどにあてて蛍光を観察するときは、実験室のブラインドを閉めて部屋の明かりを消す。

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学日吉キャンパスの文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマは2007年に開始されました。 水素原子の発光スペクトルに関する実験内容は実験書(1)をベースにしています。それによると、回折格子をもちいた回折計で角度を測定して波長を計算して います。本実験では浜松ホトニクス㈱製のミニ分光器を用い、パソコン上でスペクトルを表示し波長を求める方法を採用しました。また、光の作用を身近に感じ られるように、ホトクロミズムや蛍光鉱物の実験も含めることにしました(2,3)。バルマーランプのスペクトルにおけるノイズピークの原因を調べたところ,放電管中の水蒸気の分解でHの他に生じたOHとOによる発光であることがわかりました(それぞれ309 nmと777 nm)。また,1,3,3-トリメチルインドリノ-6'-ニトロベンゾピリロスピランのトルエン溶液にブラックライトの光をあてても,室温が比較的高いと着色しにくくなります。この件について,追加実験および文献調査をした結果,温度が数度違うだけで,退色速度が約1.4倍に増えるためであることがわかりました。(4)

参考文献
(1)「慶應義塾大学理工学部1年 自然科学実験 物理学編」(慶應義塾大学理工学部基礎教室2006年). 原子スペクトル、pp.57-65.
(2)「実験で学ぶ化学の世界4」日本化学会編(丸善、1996年).ホトクロミック化合物、pp.137-140.
(3)「実験で学ぶ化学の世界4」日本化学会編(丸善、1996年).宝石や鉱物を化学の目で眺める、pp.114-116.
(4) 大場茂、向井知大、小畠りか 「バルマーランプのスペクトルとスピロピラン化合物のフォトクロミズム」、慶應義塾大学日吉紀要、自然科学No.52, 投稿中 (2012年)。

実験テキスト

原子スペクトルと光の作用  pdf (370KB)